施術のご案内

西洋医学では、お薬を使ったり、場合によっては手術することによって人間の回復力を応援しますが、東洋医学としての鍼灸では、経穴（いわゆるツボ）というものに鍼やお灸をすることによって自然治癒力を応援します。

人は病気になると、身体に様々な変化が起きますが、経絡（ツボの流れ）・経穴（ツボ）の変化もその１つです。私たち鍼灸師は、身体に起こったこの経穴（ツボ）の変化を判断し、治療をしています。この変化は、一人ひとり、また身体の状態の変化に応じて、絶えず変わっているのです。

この経穴（ツボ）は、経絡という連絡路によって内臓とつながっており、その状態を反映してきます。

例えば、東洋医学でいう肝臓は睡眠の質とかかわりが強い臓器なのですが、不眠症で睡眠不足が続いていれば、肝臓の検査数値は大きく変化がない状態でも、体表から触れてみると肝臓の周囲が腫れぼったくなっているのがわかります。その場合、肝臓の経穴（ツボ）にも変化が現れていますので、鍼灸で治療することができます。もちろん、そういう方には、短い時間でもいいから足し算で、休息をとるように勧めたり、少しずつでも生活リズムを改善できるように、また、気持ちの持ち方を広げていただけるような提案を治療の中でお話しています。

また、現在は西洋医学でも、こころ（心理的ストレス）と身体の関係についての認識が高まっていますが、東洋医学ではかなり昔から、より具体的に内臓に変化が表れてくることを捉えています。それは経絡を通して身体の表面にツボの変化として現れてきます。ですから、本人にはっきりとした自覚症状のない状態であっても、経穴の変化として皮膚を触れるとわかります。また、人によっては、関節の痛み、背中の痛み、腰の痛みとして感じていても、東洋医学としての鍼灸の視点に立てば、心理的ストレスがもとになって経絡・経穴（ツボ）に変化が起こっていてその影響により特定の部位に痛みが起こっていると判断にする場合もあります。その場合、痛む部位ももちろんですが、患部だけでなく、それに関係のある離れたところにある経穴（ツボ）を使うとよく効きます。それは、症状の背景にある内臓の疲労が改善するので、経絡の状態が回復し、それによって影響されている筋肉や腱の働きが回復するので治る、ということになるのです。

詳しい問診が東洋医学としての鍼灸の治療方針を決める上で大切ですので、患者さんのお気持ちに配慮しながら、お困りの症状について丁寧にお話をうかがうよう心がけています。

例えば、どんな時、どんな状況で症状が現われてきたか。今までかかったことのあるご病気（既往歴）、ご家族のご病歴（家族歴）、発病前の生活から現在までの経過、これまで受けてきた治療の内容などについて、患者さんの気持ちに配慮しながら詳しくうかがいます。

また、東洋医学としての鍼灸の診断法は、手首の脈に触れ、舌の状態を見て、お腹、背中などの皮膚の状態を観察し、手で触れてみて、その状態から治療点を決めていきます。ですから、診察自体が患者さんのストレスにならないように丁寧な説明と診察をこころ掛けています。

慢性病で一生薬を飲まなければならなかったり、薬を飲みながらも十分な効果が出ていない場合、また症状の改善には手術をしなければならないと言われている場合であっても、鍼灸治療と生活の改善で治っていく方は、決して少なくないのです。実際に患者さんが自分の心身を見つめなおし、まじめに鍼灸を受けていけば、必ず身体は回復していきます。

もちろん、進行の速い病気や重篤な病状など、西洋医学の薬や手術のほうが良い場合には、その事をお伝えします。患者さんご自身がお身体の状況を良く知り、よりよい選択をする為に東洋医学としての鍼灸の立場からアドバイスをします。

関節や筋肉に動作時の痛みがある場合、実際の身体の使い方を見せてもらって動作分析をし、スポーツ選手の場合にはフォーム指導、脳血管障害後遺症の場合にはリハビリテーション（運動療法）指導を無料で行っております。

身体の運動は多くの関節と筋肉の連続した協調によってはじめてスムーズに行われています。身体の１部分の痛みであっても、全体の中の１部であるという観点に立ち、重心の置き方、初動作から動作終了までの運動リズム、呼吸の仕方などを考慮してアドバイスを行います。

また、脳血管障害後の麻痺に対するリハビリテーションの場合は、麻痺による異常な筋緊張がどうしたら起こらなくなるのかを、実際にお身体を動かして頂きながら説明しています。また、転倒などの危険がないように安定した姿勢から訓練を始め、１歩ずつ段階を追って指導しています。

運動による負担が痛みの原因になっている場合には、より負担のないのびやかな動き方を覚えてもらうことで、回復を早め、再発を防ぎ、運動時のくせを改善しパフォーマンスを上げていただくことが出来ます。また、後輩などの同じスポーツ愛好者に、自身の経験からのアドバイスをしてあげることが出来るようになります。

治療の効果を早く出すためには、できれば毎日治療を受けた方がいいのですが、実際には時間的にも経済的にもなかなか大変です。

当院では、一人ひとりの身体の状態にあったツボに、治療の最中にマジックでしるしをつけ、ご家庭で簡単に治療が出来るようお灸の指導をしています。

お灸をするツボは、わかりやすいようにマジックで点をつけ教えています。ツボの数が多いと毎日続けにくいので、大切なツボ1～３か所ぐらいから始めます。お灸に意欲的な方や、お身体の状態によっては、もっと多くすえるように指導します。

ツボが合えば、お灸はとても良く効きます。ご自宅でも治療をして頂くことにより、回復までの期間が短くなります。また、お灸をすることを通して東洋医学としての鍼灸の考え方、身体の捉え方を身につけられます。自分でやって楽になると自信をもっていただけるので、自分の身体の症状に向き合おうという前向きな意識をもって下さり、治療効果を高めます。